夕凪

そんな彼に、少しだけ苛立ちにも似た感情を覚える。


『何で、いつも笑ってるの?無理する必要ないのに。』


一瞬だけ真顔になって、彼はまた笑顔を作る。


「なんかね、癖なんだ。笑ってれば皆の機嫌も良くなる気がして。」




心の優しい人なら、その言葉を聞いて涙を流すのかもしれない。

私は、悲しかったけれど涙は出なかった。

守らなくちゃ、咄嗟にそう思ったんだ。

嘘じゃないよ。

本能で、そう思ったんだ。

< 68 / 148 >

この作品をシェア

pagetop