夕凪

『なんか機嫌悪いね?』

小声で圭介に尋ねると、
「なぁ。珍しい。」
長い付き合いの圭介も不思議そうな目で見ていた。

その会話が聞こえていたかのように、彼はテレビに顔を向けたまま更に不機嫌な声を出す。


「何の用?」


「え?あぁ、昨日みんなどうしたかと思って。」


『こっちの台詞だけど!』


そう言うと圭介は嬉しそうに昨日の出来事を話した。

コンビニに行ったけど花火は売り切れていて、別のコンビニやスーパーに行き、やっと花火を買ったこと。

帰り道に公園で話していて遅くなったこと。

今度2人で遊ぶこと。



『へぇ。良かったね。』

圭介は何か理由をつけて、この話をしに来たかったらしい。

本当に分かりやすい人間だ。
< 73 / 148 >

この作品をシェア

pagetop