夕凪
圭介の話を聞いていると、もう時計の針は2時を回ったところだった。
『あたしバイトだから帰るね!』
「送ってく。」
悠斗くんはタバコの火を消すと、立ち上がった。
『バイクだから平気だよ。圭介いるし、家にいなよ。』
「そうだな。お前は1人で帰れ。真っ昼間から変態はいないだろうし。今日は海行くからな。」
圭介はそう言いながら悠斗くんを座るように促す。
「いいよ。こいつ留守番させときゃいいし。」
『平気平気!じゃあ、またね!』
そそくさとリビングを出ると玄関にサーフボードがある。圭介のものだろう。
「ホントに平気?」
『平気だよ。まだ昼間だもん。』
「うん。じゃあ、気を付けてね。また連絡する。」
『うん、バイバイ!』
家を出て、原付にまたがると彼の家を見上げた。
本当に大きくて1人で暮らしているとは思えない家。
家族がいて、毎日平凡に暮らしている私には想像もつかなかった。
1人の寂しさや虚しさも。
彼の心の闇も。