夕凪


颯太くんに連れられて病室に入ると、窓際のベットに横たわる彼と、隣に座る男の人が見えた。

「悠斗。」

颯太くんの声に2人が反応する。

悠斗くんとよく似た、たれ目の優しい顔つきだった。


「茉咲ちゃん。」


彼は人工呼吸器を付けていなければ点滴も打っていない。

至って元気そうに見える。


『大丈夫?』


彼が返事をする前にお兄さんが立ち上がって私の顔を見た。


「悠斗の兄です。」


『緒方茉咲です。はじめまして。』


お兄さんは笑顔を作ると、また椅子に座る。

笑った顔は更に2人を似せた。


「3日ぐらいで退院できるって。」


彼は嬉しそうに八重歯を見せると、私の頭を撫でた。
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