夕凪


「だから、大事にしてあげて。」


話を聞き終わる前に頬を涙が伝っていた。


こんな形で彼の家族の話を聞くとは思っていなかったけど、待っていてもきっと彼はなかなか話さなかっただろうから
聞けて良かったと素直にそう思った。


その孤独がどれくらいのもので、彼の虚しさなんてものは計り知れないけれど
今、きっと彼を支えているものは
見慣れたこの、彼より小さい自分の手なんだと知った。
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