ごめんしか言えなくて、ごめん。
通行人
「今日さ、カラオケ行かない?」
香菜にそう誘われた私。
もう理人と話さなくなって2ヵ月以上経った。
季節は、暑くてアイスを食べたいと思ったあの日からすると、
だいぶ秋に近づいていた。
「ねぇ、いいかげんほんとのこと話してよ?」
カラオケで歌い疲れた香菜は、さみしそうに眉根を寄せて尋ねてきた。
私は理人とのことを結局誰にも話していない。
親友の香菜にも、なんだか言う気になれなかった。
だって、、、
「話すようなこと、何もなかったもん。話しようがないよ……」
そう。
別に彼女がいたことを彼が故意に黙っていたかなんてわからない。
ただ自分が知らされてないと勝手に被害者ぶってるだけかもしれないのだ。
それに、彼女がいるのに自分と仲良くしていた彼の気持ちがわからないなんてことを口にしたところで、
もし彼女がいるからと突き放されたら、きっとその気持ちがわからないと怒っただろうから。