君はここにいる
墨色の小さな虫だ
簡略化された虫の形をした何かが星野から放たれる
「星野晴明君!」
泉先生が強い声で叫んだ
次の瞬間には零次の身体は白い布に包まれていた
壁のように立ちふさがった布に阻まれ虫は消える
「どうしてこんなことするの!?」
大きな瞳に涙を溜めて泉先生は肩を震わせる
「新しいお友達に式を飛ばしたり!乱暴なコトを言ったりして!」
先程とは違い、震える声
言動も心なしか幼く感じる
「先生はね!みんな………みんなに仲良く………グズ………してほしいのに」
幼く感じるのではない
幼いのだ
啜り泣きながらお友達とは仲良く、だなんて教師のする行動だろうか?
その姿はいつものことなのか、生徒たちは口々に泉先生を慰める
「先生、晴明君が喧嘩を仕掛けるのはいつものことですよ?」
「そうね、気にしなくても大丈夫です。それが彼なりのコミュニケーションの取り方なんですから」
「おい、操(みさお)輝夜(かぐや)勝手なこというなや!…………先生スミマセンでした」
クラスメイトに悪態をつきながらも悲しげに見つめてくる泉先生を見て、星野は頭を下げる
泉先生も謝罪の言葉を聞いて笑みが戻る
「良かったー、もうケンカしちゃだめよ?」
どこか脱力したようなノボノボ空気になったが大切なコトを聞かなくては
「あのー…………今、泉先生布出しましたよね?…………手品?アハハ」