ケチャップのないオムライス【短編】
締切前
いつだったか彼は、締切前に汗水垂らして
焦る状況が好きだと言った。
コツコツと原稿を書き進める訳でも無く、
溜まったものを必死に片付けるのが自分らしいと胸を張った。
最初は、それを素敵だなんて思った。
寿命を超えているであろう丸い縁の眼鏡も、
執筆中に手が止まると貧乏ゆすりをする癖も、
愛しいだなんて思っていた。