ケチャップのないオムライス【短編】
「あなたもう32でしょ。そろそろ生まなきゃ、高齢出産は辛いのよ?」
母は私を36で生んでいる。
高齢出産の厳しさも、辛さも自分が一番よく分かっているのだ。
孫の顔を見たいという気持ちにも、無理はないけれど…
「でも今は無理だよ。彼も締切前で頑張ってるの」
「何が締切前よ。誰にいつまでって決められてるわけでもないのに」
その通り…私は心の中で深く同意していた。
「全く…名前負けもいいところよ。そろそろちゃんとした職に就くべきだわ」
母の言うことは一ミリも間違っていない。
文太という名前が負けていることも、
働かずにずっと執筆しているのがよくないことも。
ずっとこのままじゃいけないことも。
私が一番よく分かっているつもりだ。