ケチャップのないオムライス【短編】
「…だめ」
「何か言った?」
「駄目よ、そんなの許さない」
「…え?」
彼に怒りさえ湧いていた。辞めるだなんて、簡単に言うなんて…
「どうして辞めるなんて言うの?好きなんじゃないの?小説を書くこと!」
「そ、そりゃあ…好きだけれど…」
「だったら続けなさいよ!昨日書き終わった原稿っていうのは!?出版社に送ったの?」
案の定返ってきた、送ってない、という返事に私は体が熱くなるのが分かった。
「見てもらってもいないのに、みっともない。
こんなところで諦めるの!?
いいじゃない、誰に何と言われようと続ければ!
私が働くわよ!
私が支えるから!
だからあなたは、ずっと…続ければいいのよ…」
ひとしきり思っている所を言葉にしたところで、床にペタっと座り込んだ。
フローリングがやけに冷たくて、なぜか悔しくて、涙が出た。