ケチャップのないオムライス【短編】
あら、美味しそう
風邪を理由に彼にデートをドタキャンされた。
ちょっとムカついたけど、仕方ない。
ママにお粥の作り方を教えてもらって、お見舞いに行くことにした。
彼には内緒でサプライズで家に向かう。
この間連れてきてもらったばかりの小さなアパート。
長い階段を上って、彼の苗字の表札を確認して、インターホンを鳴らす。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…
何度押しても出ない。
おかしい。
これだけ鳴らしたら、気づくものでしょ?
ドアノブに手をかけてみると、力なくガチャっと空いた。
暗くて短い廊下。
私のではないパンプスが玄関に転がっている。
心臓がバクバクしている。
ゆっくり歩いて着いたリビング。ベッドの方を見ると――――