Loneliness
「“蒼のテューロ”なんて、
誰かが勝手に呼び出した唯の通り名だ。
俺は そんな大層な人間じゃない。」
胸に巣食う、どす黒い感情を消そうと、
俺は深く溜め息を つく。
その様子に黙り込んだのは
リティリーのみで、
フェイルは嫌な笑顔を浮かべていた。
「へぇ、お前、“特例”なんだ?」
彼は そう言いながら、
俺の顔を覗き込む。
「良かったなぁ、
“貧しい人生から逃れられて”。」
その言葉に、脳裏に記憶が蘇る。
もう ぼやけてしまって、
はっきりと思い出せない、
大切だった人。
その人の手の温もりすら、
俺は思い出せない。
「フェイル、よせ!」
リティリーが彼の腕を掴む。
その落ち着いた声に、
俺の心も冷静さを取り戻した。
こんなに感情的に なったのは
久し振りで、
まだ こんな気持ちが
胸の奥底に在るのだと驚いた。
「別に、
ちょっと からかっただけだろ。」
尚も下卑た笑みを浮かべるフェイルを、
好きに なれる日は恐らく来ないだろう。