蒼の光 × 紫の翼【完】
わたしはお昼ごはんを済ませ、デザートを食べていた。
久しぶりの甘い物ー!
デザートはアップルパイだった。リンゴの味が砂糖の甘味に負けていない。絶品だ。紅茶の苦味もほどよくパイに合っている。
わたしはリリーちゃんにも勧めたけれど、断られてしまった。
「ひとりじゃ寂しいからさ、一緒に食べようよ」
わたしが懇願すると、渋々といった感じで席についてくれた。リリーちゃんがアップルパイを一口食べたところで話しかける。
「ねえねえ、もっと砕けて話せない?わたしはそんな大層な身分じゃないし。わたしは……17歳なんだけど、リリーちゃんは?」
「今年で16になります」
「え、じゃあ今は15歳なの?」
「左様でございます」
「……だから、その硬い話し方やめてよ?」
「いえ、そのようなことは……」
「じゃあさ、リリー様とか呼ばれていい気分になる?わたしはそんな偉い人じゃない!とか思わない?」
「…………はい」
「だからさ、硬い話し方は止めよ?歳もそんなに離れていないし。敬語じゃないといけないんでしょ?でもそこまでかしこまらなくていいから、もっと砕けて?」
「はい!かしこまり……わかりました!」
「うんうん、その調子!」
わたしたちは二人で笑い合った。
わたしからは何も教えてあげられないけど、リリーちゃんの身の上話を、自己紹介みたいな感じで聞いた。
リリーちゃんのお母さんが現王女様のお世話をしていて、リリーちゃんも侍女になったんだそうだ。
それに元々スバンリー家はそういう家柄だったし、お母さんに憧れて、自分から侍女に進み出たみたい。
何年やってるの?と聞いたら、
「まだ2年ですよ」
と答えられた。
ということは、13歳ぐらいからやっていることになる。
すごいね、とわたしが正直に言ったら、
「いえいえ、わたしはまだ半人前ですよ。今回、カノン様のお世話をすることになって、恐縮しています。こんなわたしがカノン様を充分にお世話できるとは思えません。
でも、アルバート様にご指名されたので、逆らえませんでしたが……」
「ご、ご指名?!アルさんから?」
それも初耳だぞ?
「はい。ですが、アルバート様から言われました。これはカイル様の意思でもありますから、粗相のないように、と」
「それじゃ、責任重大だね!」
「そうなんです……これから勤まるのか心配です」
「大丈夫!わたしも出来るだけのことはするから!」
わたしは身の回りのことは自分でやってきたから、だいたいのことはできるつもりだ。
「そ、そんな!わたしたちはそれが仕事なんですよ!」
「大丈夫だってば。仕事を全部奪ったりなんかしないよ。例えばこのドレス。着方も脱ぎ方もわからないし。何もかもを奪えるわけじゃないから、ね?」
「……はい!これからよろしくお願いします!」
「うん、よろしくね!さて、アップルパイ食べよう?暖かいうちに」
「そうですね!」
わたしたちはその後もたわいない話をして、書斎室に向かった。