蒼の光 × 紫の翼【完】
「失礼いたします、カノン様をお連れいたしました」
「入って」
書斎室に着きリリーちゃんがドアをノックすると、内側からアルさんがドアを開けてくれた。
「ありがとうございます」
わたしはアルさんにお礼を言って、書斎室の中に入った。
それを見計らって、アルさんはドアを閉める。
書斎室の中で、カイルさんは机に向かい、書類を読んでいた。
さらに、ソファーの上にはルーニー君がぽつんと座っていた。
「あ、ルーニー君もいたの?」
「…………」
「……あれ?」
わたしはルーニー君に近づいて、後ろから声をかけてみたけど返事がない。
わたしがなんとも言えない顔をしていると、アルさんがわたしに教えてくれた。
「さっきの説教を僕がしてあげたんだ。さっきまで涙目だったけど、それを見せまいとして我慢しているわけ」
「あ、なるほど」
泣き顔なんて女の子に見られたら、男の名が廃るってやつかな?
「それに、リリーちゃんがいるし」
「……え?」
アルさんが小声で言ってきたけど、わたしにはその意味がわからなかった。
「ルーニーとリリーちゃんは同い年で幼馴染みなんだ。とすると、何かが浮かび上がってこない?この状況とその情報で」
「……ああ、はい、なるほど」
つまり、ルーニー君はリリーちゃんが好き、ということみたい。だから涙を我慢して、かっこ悪いところをリリーちゃんに見られたくない、と。
「あの、何か用があって呼んだんですよね?」
わたしは思いきって聞いてみた。わたしもいろいろ聞きたいことがある。瞳のこととか、わたしの待遇とか……
「うん、そうだよ。さあさあそこのソファーに座った座った!リリーちゃんはお茶を用意してくれる?」
「かしこまりました」
リリーちゃんは隣接している部屋へと行ってしまった。
わたしはルーニー君の向かいにあるソファーに座る。
「さて、いろいろと話をしたいんだけど、カイルは今手が放せないみたいだからそんなに重要でもないことを聞いてあげるよ」
アルさんもソファーに座った。ルーニー君の隣に……
「……では、あの、瞳の色がどうのこうのって言っていますけど、色に何か意味があるんですか?」
「……けっこう重要なことなんだけどな、それ。まあいいや、教えてあげるよ」
前にあるテーブルにティーカップが次々と置かれていく。
いつの間にかリリーちゃんが帰ってきて、お茶を用意してくれたようだ。
「ありがとう。リリーちゃんも座りなよ」
「い、いえ……わたしは……」
リリーちゃんは頭を振って遠慮した。
「いいよ、リリーちゃんも座りなよ。話は長くなるからさ。リリーちゃんにも聞いてほしいし」
「……かしこまりました」
リリーちゃんがわたしの隣に座ったところで、アルさんは紅茶を一口飲んでから話し始めた。