蒼の光 × 紫の翼【完】
僕たちの中には能力を持って生まれる人がいる。
例えば、カイルは水系の力が使える。戦闘に向いているかな。ごく稀に、治癒をすることができる人が生まれてくるんだ。
僕とルーニーは風を操ることができる。これは戦闘にも向いているし、守りにも活用できる。
リリーちゃんは炎系の力。水を沸かすときに便利だったり料理のときにも使えるから、お手伝いさんに多い力だね。まあ、一歩間違えれば大惨事になるけど……
これらに共通していることは、瞳の色でだいたい能力の性質がわかるってこと。その色をしていても、能力が使えるわけでもないけどね。
カイルは青、僕たちは緑。リリーちゃんはオレンジ。赤色の人も炎を操れるね。
もちろん、黒い瞳の人もいるけど能力は持ってないかな。
今まで確認されている色は、青、緑、オレンジ、赤、黒ぐらい。
あ、君が疑問に思っていることは後でね。重要事項だから。
あとは?……ああ、待遇のことね。
ひとつ確認するけど、ここに来るまでに誰かに会ったり見られたりした?
あ、ありがとうリリーちゃん。人目の少ないルートを選んでくれたんだね。それで大正解だよ。
カノンには部屋を移ってもらうことになったんだ。理由?理由はね……
やっぱりダメだって言われちゃってね……。上層部がさ。じじぃ共がうるさいんだよ。
でも、このことを知っているのはほんの一握りで、信頼している大人だから大丈夫!カノンはまだこの城で公になってない……はず。
侍女の間で噂とか流れてる?あの部屋に誰かが入った、とか、カイルが女の子を連れて来た、とか……
……はあ、良かった。まだなんだね!
話を戻すけど、カノンにはこれから男の子になってもらうつもりだからね!
……そんな顔しないでよ。
僕だって不本意だよ。でも、これが一番安全なんだ。カノンを守るためだよ。
一度この城の中に入ったら、そうそう外へは出られないんだ。手続きとか、ね……
それにその瞳でうろうろしていたら、拐われちゃうよ?そうなると誰も助けられなくなっちゃう……
だからその話は後だって……
そのドレス、あまりお気に召していないみたいだし?と言うより慣れていないんでしょ?
だったら、男の子の格好の方が動きやすくない?一石二鳥だよ。
安全でなおかつ動きやすい!うんうん、いいと思うよ?
あ、リリーちゃんのことは心配しないで。カイルと僕が独断で指名したから無かったことにできるから。カノン付きの侍女って肩書きは白紙にできる。
でもリリーちゃんに会っちゃいけないわけじゃないから、これからも仲良くね?
でも敬語だからね話すときは。二人きりのときは普通でいいけど。男の子の話し方はわからないよね?だからってルーニーの真似だけは絶対にダメだよ?
え?ああ、これからの君は、庭師としてこの城で働くこと。お花の世話とかできる?
よかった。やったことがあるなら問題ないね。おじいさんには話をつけてあるから安心してね。
……そうか、名前を変える必要があるのか。カノンじゃあまり男の子らしい名前じゃないね。
名前何がいい?ルーニーとリリーちゃんと相談してもいいから決めておいて?
……ちょっと何寝てんのカイル!カイル起きろ!あまり眠れていなかったのは知ってるけど、寝るな、カイルー!カイル待ちなんだからねー!