蒼の光 × 紫の翼【完】
そして、風の噂で男は聞いた。
隣の国の側室に、紫の瞳をもつ美しい女性がいると。
あのあと、女性は隣の国へと逃げ延び、王の耳にその美貌さが伝わって城へと連れ込まれた。
男はまたしても憎悪が増した。俺の女だ!
男が憤慨しているとき、家に訪問者が来た。
男が仕方なくドアを開けると、黒いマントに身を包んだ数人の女がいた。顔がよく見えない。しかし、美女だということは窺えた。
男は迷わず家へと招き入れた。
男が顔を見せてくれと懇願すると、ひとりの女性がフードを下ろした。
男は驚いた。その女性の瞳は紫色をしていたのだ。
男は迷わず、あの女性の血縁者だと思った。
その女性は男に、力がほしいか、と質問した。
男は頷いた。あの女性を取り戻すためだ。
女性はその言葉を聞いた瞬間、男を刺した。
男は一度死んだ。だがすぐに息を吹きかえした。男が不思議に思っていると、女性は鏡を差し出した。
男がその鏡を覗きこむと、そこには赤い瞳をもつ自分がいた。男は今まで黒い瞳だった。
男がさらに困惑していると、女性は不適に笑い、まずはこの紙を燃やしてみろ、と言った。
その紙は、隣の国の何かの貼り紙だった。隣の国といえば、女性が側室になった国。
男はすぐにかっとなった。すると、その紙はいきなり音をたてて燃え始めた。
男は火を操る力を手に入れたのだ。
それから男はマントの女性たちに促され、仲間を集めることにした。
隣の国に反感をもっている者はもちろん、ただ力を求めている者までも。
能力者の集団を引き連れた男は、隣の国に攻め行った。
続く戦い。増える死者。その死者には、隣の国の兵はもちろん、住民、そして能力者。
適応していなかった能力者は、力に呑み込まれ死んでいった。
徐々に圧され始めた男。意識が朦朧としていたとき、目の前にあの美しい女性が現れた。
最初幻覚かと思ったが、それでもいい。
男は女性に愛を告げた。
しかし、女性はそれを拒んだ。このようなことは望んでいなかったと。
相手国の城に影がさしたと思い、見上げると、空中に浮かぶ大きな島があった。
男は信じられない、といった目で見ていた。
どうやら女性はあの中にいるらしい。しかし、もう降りてくるつもりはないようだ。
そして、命を使う、と。
男が意味を聞いても答えてはくれなかった。ただ、謝って、感謝の言葉を告げた。
それと同時に、女性の幻覚は消えた。
そして、空に浮かぶ島から眩しい光が地上を照らした。
男は思わず目を瞑ったが、しばらくして開いてみた。
そこには元通りの街、生き返った兵や住民がいた。
しかし、能力者の死体は息を吹きかえさなかった。
男は兵に捕らえられ、処刑された。逃げ延びた能力者も数人いた。
しかし、この争いは忘れ去られていった。
それからというもの、力をもつ子供があちらこちらで増え、今では当たり前になった。
そのせいで、争いが忘れ去られてしまったのかもしれない。
この話は王族のみに伝えるが、決して書にまとめてはいけない。
同じことが繰り返されないように、またあの紫の瞳をもった集団が姿を現さないように。
なお、美しい女性は紫(ゆかり)姫と集団に呼ばれていたそうだ────
隣の国の側室に、紫の瞳をもつ美しい女性がいると。
あのあと、女性は隣の国へと逃げ延び、王の耳にその美貌さが伝わって城へと連れ込まれた。
男はまたしても憎悪が増した。俺の女だ!
男が憤慨しているとき、家に訪問者が来た。
男が仕方なくドアを開けると、黒いマントに身を包んだ数人の女がいた。顔がよく見えない。しかし、美女だということは窺えた。
男は迷わず家へと招き入れた。
男が顔を見せてくれと懇願すると、ひとりの女性がフードを下ろした。
男は驚いた。その女性の瞳は紫色をしていたのだ。
男は迷わず、あの女性の血縁者だと思った。
その女性は男に、力がほしいか、と質問した。
男は頷いた。あの女性を取り戻すためだ。
女性はその言葉を聞いた瞬間、男を刺した。
男は一度死んだ。だがすぐに息を吹きかえした。男が不思議に思っていると、女性は鏡を差し出した。
男がその鏡を覗きこむと、そこには赤い瞳をもつ自分がいた。男は今まで黒い瞳だった。
男がさらに困惑していると、女性は不適に笑い、まずはこの紙を燃やしてみろ、と言った。
その紙は、隣の国の何かの貼り紙だった。隣の国といえば、女性が側室になった国。
男はすぐにかっとなった。すると、その紙はいきなり音をたてて燃え始めた。
男は火を操る力を手に入れたのだ。
それから男はマントの女性たちに促され、仲間を集めることにした。
隣の国に反感をもっている者はもちろん、ただ力を求めている者までも。
能力者の集団を引き連れた男は、隣の国に攻め行った。
続く戦い。増える死者。その死者には、隣の国の兵はもちろん、住民、そして能力者。
適応していなかった能力者は、力に呑み込まれ死んでいった。
徐々に圧され始めた男。意識が朦朧としていたとき、目の前にあの美しい女性が現れた。
最初幻覚かと思ったが、それでもいい。
男は女性に愛を告げた。
しかし、女性はそれを拒んだ。このようなことは望んでいなかったと。
相手国の城に影がさしたと思い、見上げると、空中に浮かぶ大きな島があった。
男は信じられない、といった目で見ていた。
どうやら女性はあの中にいるらしい。しかし、もう降りてくるつもりはないようだ。
そして、命を使う、と。
男が意味を聞いても答えてはくれなかった。ただ、謝って、感謝の言葉を告げた。
それと同時に、女性の幻覚は消えた。
そして、空に浮かぶ島から眩しい光が地上を照らした。
男は思わず目を瞑ったが、しばらくして開いてみた。
そこには元通りの街、生き返った兵や住民がいた。
しかし、能力者の死体は息を吹きかえさなかった。
男は兵に捕らえられ、処刑された。逃げ延びた能力者も数人いた。
しかし、この争いは忘れ去られていった。
それからというもの、力をもつ子供があちらこちらで増え、今では当たり前になった。
そのせいで、争いが忘れ去られてしまったのかもしれない。
この話は王族のみに伝えるが、決して書にまとめてはいけない。
同じことが繰り返されないように、またあの紫の瞳をもった集団が姿を現さないように。
なお、美しい女性は紫(ゆかり)姫と集団に呼ばれていたそうだ────