蒼の光 × 紫の翼【完】
「……完全に押し付けられたな」
「そんな、人を物みたいに言わないでください。わたしだってなりたくて紫姫になったわけじゃないんですから」
「……おまえらが食べた鹿、たぶん山奥から逃げてきたやつじゃないか?大物がそのぐらいの標高にいるはずがない」
「そうなんですか?」
「そうだ。軍人がうろうろしてたら、いい気分はしないだろう。
……やっぱりおまえは、異世界から来たのか?」
「そうですけど……ってなんで知ってるんですか。紫姫の話にはそんなこと一言も出てませんよ」
「紫姫本人が言ったそうだから、仕方ないだろう」
「本人が?いつの時代の人なんだろう……それに自覚があったんですね。わたしは全然実感が湧かなかったのに」
「おまえはアホだから、キレイさっぱり忘れてるんじゃないのか?」
「……誰がアホですか」
「おまえに決まってんだろ?知りもしないところを突っ走って迷子になったのはどこの誰だったか?」
「……」
ぐうの音も出ない。やっぱりケヴィさんには敵わないのかな。
「……今度はケヴィさんの番です。約束ですからね?」
「俺は約束は破らない。いいぞ、身の上話をしてやるよ」
……なんですかその上から発言は!
「あからさまに感情を顔に出すなよ。女の武器は顔ってよく言うだろうが」
「……僕は男です」
「逃げやがって……」
ケヴィさんは呆れたような顔をしたけど、きっちりと身の上話をしてくれた。