私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
開発部の男
私は小早川裕美、23歳。去年の春、大学を出て、この就職氷河期の中で見事に大手システム開発会社に就職を決めたの。どう、凄いでしょ?
配属先は総務部で、社員のID管理や人事データの入力なんかをちまちまやってるの。地味な仕事だけど、結構気に入っているわ。あまり残業はないしね。
「おい、そこのあんた。このIDカード調べてくんね?」
“わたし”が真面目に人事データをパソコンで打ち込んでいたら、どこからかいかにも下品な男の声が聞こえた。この会社には比較的品のいい社員が多いから、こういう事は珍しい。外部の人が紛れ込んだのかしら、と私は思った。
「おい、シカトすんなよな?」
再びそんな声がして、声がした方に顔を向けたら、受付カウンターの向こうに長身の男が立ち、じっとこっちを見ていた。
えっ? 私?
あの男、私に言ってたの?
カウンターの担当は当番制になっていて、今日は私の担当ではない。だから知らん顔をしていたのだけど、どうやらその男は私を“ご指名”らしい。まったく、何様のつもりよ?
仕方なく“わたし”は仕事を中断し、私が立ち上がってカウンターへ向かって行った。
配属先は総務部で、社員のID管理や人事データの入力なんかをちまちまやってるの。地味な仕事だけど、結構気に入っているわ。あまり残業はないしね。
「おい、そこのあんた。このIDカード調べてくんね?」
“わたし”が真面目に人事データをパソコンで打ち込んでいたら、どこからかいかにも下品な男の声が聞こえた。この会社には比較的品のいい社員が多いから、こういう事は珍しい。外部の人が紛れ込んだのかしら、と私は思った。
「おい、シカトすんなよな?」
再びそんな声がして、声がした方に顔を向けたら、受付カウンターの向こうに長身の男が立ち、じっとこっちを見ていた。
えっ? 私?
あの男、私に言ってたの?
カウンターの担当は当番制になっていて、今日は私の担当ではない。だから知らん顔をしていたのだけど、どうやらその男は私を“ご指名”らしい。まったく、何様のつもりよ?
仕方なく“わたし”は仕事を中断し、私が立ち上がってカウンターへ向かって行った。
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