私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「ああ、そういう事ですか。権限の登録って色んな部署が噛んでますからね、申請してもらって手順通りに作業しないといけないんです。ミスを防止するためにも」

「そのミスをしたのもおまえの所だよな?」

「確かに……」

「抗議しに来たんだが、もうそれはいいや。でも何とかなんねえかな? 今日中に経費を精算したいんだよ」

「わかりました。岩崎君のために一肌脱ぎますよ。ちょっとだけ待って貰えますか?」

「おお、やってくれるか? 悪いな」


という事で、玉ちゃんの裏技(?)で岩崎さんのカードの権限は復旧する事になった。お硬いITセクションでも裏の手があるとは知らなかったわ。


「良かったですね? では、私はこれで……」


と言って職場に戻ろうとしたら、岩崎さんにムズッと腕を掴まれてしまった。


「ちょっと……」

「まだ、いいだろ? もう少し付き合ってくれよ」


と言われ、“いいえ、失礼します”と私は言うつもりだったんだけど、


「わかりました」


と“わたし”が答えた。私ではなく。

なに、勝手にオッケーしてんのよ? 真面目なあんたが仕事をサボるわけ?

『いいの。仕事より恋が優先だから』

恋!?

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