私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「はあ? 薫姉さんが男? あんた、何言ってんの? 冗談は顔だけにしなよ」


顔って……ムカつく。
でも、予想通りの反応だわね。


「冗談じゃなくて本当よ? 君がどうしてそんな風に思い込んだのかは分からないけど、“彼”はれっきとした男なのよ?」

「バカバカしい。証拠はあるの?」

「へ?」

「薫姉さんは男装が好きだから、それであんたは勝手に男だと思ってるんじゃないの?」

「男装……?」

「そう。あんたこそ勘違いしてるんじゃない? 薫姉さんはすっごく綺麗だし。あんたなんかよりも、ずっと」


うっ、確かに……


「心は女らしいしね。たぶんあんたより」


うっ、そうかもしれない……

薫さんって、実は女だったり?


「話はそれだけ? じゃあ僕は……」

「ちょっと待って!」


立ち上がりかけたアキラ君を、私は慌てて制止した。危うく私まで間違いそうになったけど、薫さんが女のわけない。

だって、仮にそうだとしたら、あのコウジって男も、このアキラ君自身も、女って事になるもの……

< 117 / 137 >

この作品をシェア

pagetop