私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
そして俺はポケットから携帯を取り出すと、ダメ元で裕美の携帯に電話を掛けてみた。だが、呼び出しはするもののやはり裕美が出る事はなかった。


あ、そうだ。GPSがあるじゃないか!


もしものために、俺は裕美の携帯のIDとパスワードを聞いていた。それがあれば、裕美の携帯の位置をGPSで追えるはずだ。携帯の電源を切られたらアウトだから、急がねば……


ああ、クソッ。予行練習をしておくんだった……

ネットでGPSの使い方を調べながら、俺は携帯を操作した。そして……


ここか!?


携帯の画面に裕美の携帯の位置が地図で表示された。そこは本郷ではなかった。方向は同じだが、もっと先だ。


「運転手さん、行き先変更! 行き先は……です。急いでください!」

「あ、はい」


俺はシートに額を付け、目を閉じて祈った。どうか裕美が、無事でいますように……と。

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