私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
しばらく車は走り、ほぼ目的地に着いた、はずだ。
そこは隣の県との境の川沿いで、アパートや倉庫が立ち並ぶやや閑散とした場所だった。この辺りのどこかに裕美がいるはずなのだが、クソッ。どこだよ……
「おや? あのタクシーは、ひょっとして……」
不意に運転手がそう呟いた。見ると、夕闇の中で路上に止められた一台のタクシーがあった。
「運転手さん、あのタクシーが何か?」
「あ、はい。今日、タクシーが一台盗まれたそうで、その会社と同じなんで、もしかすると……と思いまして」
「そ、それだ!」
俺は瞬時に閃いた。玉田の別人格は、前は宅配業者に成りすまして裕美に近付いた。そして今度はタクシーだ。タクシーの運転手に成りすましたに違いない。真由美ちゃんが“イサム”からタクシーに乗るように言われたと言っていたしな。
あの野郎、手の込んだ事しやがって……
「運転手さん、ここで降ろしてください!」
俺は運転手に万札を渡し、「釣りは要りません。ありがとう!」と言ってタクシーを飛び出し、路上に乗り捨てられたタクシーの所へ走った。
そこは隣の県との境の川沿いで、アパートや倉庫が立ち並ぶやや閑散とした場所だった。この辺りのどこかに裕美がいるはずなのだが、クソッ。どこだよ……
「おや? あのタクシーは、ひょっとして……」
不意に運転手がそう呟いた。見ると、夕闇の中で路上に止められた一台のタクシーがあった。
「運転手さん、あのタクシーが何か?」
「あ、はい。今日、タクシーが一台盗まれたそうで、その会社と同じなんで、もしかすると……と思いまして」
「そ、それだ!」
俺は瞬時に閃いた。玉田の別人格は、前は宅配業者に成りすまして裕美に近付いた。そして今度はタクシーだ。タクシーの運転手に成りすましたに違いない。真由美ちゃんが“イサム”からタクシーに乗るように言われたと言っていたしな。
あの野郎、手の込んだ事しやがって……
「運転手さん、ここで降ろしてください!」
俺は運転手に万札を渡し、「釣りは要りません。ありがとう!」と言ってタクシーを飛び出し、路上に乗り捨てられたタクシーの所へ走った。