私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
そのタクシーの中は無人だった。そのまん前は古びた倉庫だ。明かりは点いていないが、ここだろうか。この中に裕美が……?
倉庫の前に行き、扉のノブを握って回すと、意外にも鍵は掛かっていなかった。そしてそれを手前に開くと、かび臭いその中は薄暗くてよく見えない。すると……
「死ね!」
という声が中から聞こえ、続けてベチャみたいな音がした。
まずい!
俺は慌てて中に入り、目を凝らすと誰かが誰かに馬乗りになり、白い手を振り上げているのが見えた。そいつは玉田の別人格に違いない。下になり、奴に殴られているのは……裕美!?
クソッ!
想像した嫌な光景が今、正にそこで起きていた。俺は玉田に駆け寄り、振り上げた奴のか細い手首をガシッと掴んだ。
「やめろ、玉田!」
すると、女みたいなフワッとした髪をなびかせ、奴はゆっくりと俺を振り向いたのだが……
えっ?
その顔を見た俺は、あまりの驚きのため声が出なかった。
倉庫の前に行き、扉のノブを握って回すと、意外にも鍵は掛かっていなかった。そしてそれを手前に開くと、かび臭いその中は薄暗くてよく見えない。すると……
「死ね!」
という声が中から聞こえ、続けてベチャみたいな音がした。
まずい!
俺は慌てて中に入り、目を凝らすと誰かが誰かに馬乗りになり、白い手を振り上げているのが見えた。そいつは玉田の別人格に違いない。下になり、奴に殴られているのは……裕美!?
クソッ!
想像した嫌な光景が今、正にそこで起きていた。俺は玉田に駆け寄り、振り上げた奴のか細い手首をガシッと掴んだ。
「やめろ、玉田!」
すると、女みたいなフワッとした髪をなびかせ、奴はゆっくりと俺を振り向いたのだが……
えっ?
その顔を見た俺は、あまりの驚きのため声が出なかった。