私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
裕美……?
てっきり玉田だと思ったその顔は、まごうことなく裕美のそれだった。ただし、その表情は俺が今まで見た事のないもので、例えるなら酒を飲んで酔っ払い、目を座らせてくだを巻く、そんな感じ。
「じゃますんなよ」
俺が裕美を見て固まっていると、彼女は低い声でそう言った。もちろん裕美の声ではあるが、こんな低い声を聞いたのは初めてだ。
それにしてもおかしい。いつもの裕美じゃない。精神が錯乱しているのだろうか……
裕美は“手を放せ”と言わんばかりに体をよじるが、俺は彼女の手首を掴んだまま、彼女の下敷きになっている男、もちろん玉田だが、に視線を向けた。
玉田は目をつぶり、ピクリともしない。顔は腫れ上がり、口の脇から血が流れている。
まさか、死んでいるのでは……!?
俺は裕美の脇に手を入れ、持ち上げて玉田から離すと、玉田の口元に耳を近付けた。すると、玉田が息をしている事がわかった。どうやら気を失っているだけらしい。
まずはホッとしたが、そうしている間も何やら文句を言いながら、俺の体を押したり引いたり叩いたりしている裕美。
さて、彼女をどうしたものだろうか……
てっきり玉田だと思ったその顔は、まごうことなく裕美のそれだった。ただし、その表情は俺が今まで見た事のないもので、例えるなら酒を飲んで酔っ払い、目を座らせてくだを巻く、そんな感じ。
「じゃますんなよ」
俺が裕美を見て固まっていると、彼女は低い声でそう言った。もちろん裕美の声ではあるが、こんな低い声を聞いたのは初めてだ。
それにしてもおかしい。いつもの裕美じゃない。精神が錯乱しているのだろうか……
裕美は“手を放せ”と言わんばかりに体をよじるが、俺は彼女の手首を掴んだまま、彼女の下敷きになっている男、もちろん玉田だが、に視線を向けた。
玉田は目をつぶり、ピクリともしない。顔は腫れ上がり、口の脇から血が流れている。
まさか、死んでいるのでは……!?
俺は裕美の脇に手を入れ、持ち上げて玉田から離すと、玉田の口元に耳を近付けた。すると、玉田が息をしている事がわかった。どうやら気を失っているだけらしい。
まずはホッとしたが、そうしている間も何やら文句を言いながら、俺の体を押したり引いたり叩いたりしている裕美。
さて、彼女をどうしたものだろうか……