私の中のもう一人の“わたし” ～多重人格者の恋～

岩崎さんは、タバコをまだ２口ぐらいしか吸っていないのに灰皿でそれを揉み消した。


「もうよろしいんですか？」

「は？」

「おタバコ……」

「ああ……。あんた、じゃなかった裕美ちゃんが嫌かなと思ってさ」

「そんな、“わたし”は大丈夫ですから、ゆっくりお吸いになってください」

「いや、いいんだ。体にニコチン入れたから。少しだけど」

「お気遣いありがとうございます」

「どういたしまして」


『岩崎さんって、なんて優しい人なのかしら……』

はあ？ 優しかないわよ。優しかったら、私が吸わないって知った時に吸うのを止めたはずでしょ？

『うっさい！』

私の真似しないでちょうだい。
あ、そうだ。ねえ、あの人の事を聞いてよ？

『誰？』

玉ちゃん。

『なぜ？』

ん......話題作り？
それともあんた、何か話題あるの？

『岩崎さんに聞きたい事は色々あるけど、会ったばかりだし恥ずかしくて……』

だったらいいでしょ？ 玉ちゃんの事を聞いてくれても……

『わかった』