私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「岩崎さん?」

「ん?」

「ちょっとお尋ねしたいんですけど……」

「あー、何? っていうか、名前で呼んでくんない? 俺も裕美ちゃんって呼んでるからさ、バランス悪いだろ?」


何言ってんだろう。もう名前で呼び合うなんて、いくらなんでも早過ぎよね?


「はい。では、剛史さんにお聞きしたいんですけど……」

おい! 呼ぶんかい?

チッ。無視された。私は“剛史さん”なんて呼ばないからね!


「さっきの方は剛史さんのお知り合いですか?」

「さっきのって……ああ、玉ね? あいつは俺の同期さ」

「そうでしたか。ありがとうございました」

おい! それで終わりかい?

せめて名前ぐらいは聞いてよ……

『チッ』

チッて、あんたね……


「あの、お名前は……?」

「玉のか?」

「はい」

「玉田薫だけど?」


ふーん、玉ちゃんは薫さんっていうんだあ。名前も中性的なのね。


「そうですか」

「もしかして、あいつに興味ある?」

「いいえ、ありません」


私はあるけどね。


「そうか。なら、いいや」


ん?
なんか今、気になる言い方したなあ。岩崎さん……

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