私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
メールの中身はというと、夕飯を奢るから仕事が終わったら1階のロビーに来い、という用件だけの、良く言えばシンプル。悪く言えば無礼な文章だった。


何なの、コレ?
挨拶はないわ、こっちの都合は聞かないわ、日時も書いてないじゃない。たぶん今日だと思うけど。

あの人って本当に俺様よね。こんなの無視だわ。

『ダメ! お返事して!』

って言われると思ったわ。何て返事するの?

『もちろん“了解しました”でしょ?』

なんか、いいように従わされるみたいで嫌だな、私は。あんたが返事してよ。

『わかった』

“わたし”は、時間を掛けてバカ丁寧な返信のメールを打ち込んで送信した。

その後、岩崎さんからの返信を今か今かと待つ“わたし”だったけど、結局は来なかった。私は、たぶん来ないだろうなと思っていたけども。

そして、終業の時刻がやって来た。
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