私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
岩崎さんに連れて行かれたのはお寿司屋さんで、ネタにもよるけど“私達”はお寿司は好きなので先ずはホッとした。
食べ物でないモノについては深刻な問題だけど、取り敢えず今夜は心配いらないと思う。たぶん、だけど。
そこは小さなお寿司屋さんで、まだ早い時間のせいか、お客さんは私達を除けば誰もいなかった。
「いらっしゃい」
「こんばんは」
板前さんとのやり取りを見た限り、岩崎さんがこのお店の常連かどうかはわからないけど、“一見(いちげん)さん”ではなさそうだ。ここしばらくは回転寿司にしか行けていない私には驚きだけど。
「何でも食べたい物を頼むといいよ」
カウンターの前に並んで座ると、岩崎さんはそう言ってくれた。
大トロ頼んじゃえば?
『バカ言わないで』
遠慮しなくていいんじゃない? 相手は高給取りなんだから。
『うるさいなあ。黙ってて!』
はーい。
でも、岩崎さんが高給取りなのは確かだ。仕事柄大体の事はわかるけど、開発部のSEは社内でトップクラスの待遇で、私のような一般事務とは比べものにならない。キャリアも違うし、岩崎さんのお給料は少なく見積もっても私の2倍はあると思う。
食べ物でないモノについては深刻な問題だけど、取り敢えず今夜は心配いらないと思う。たぶん、だけど。
そこは小さなお寿司屋さんで、まだ早い時間のせいか、お客さんは私達を除けば誰もいなかった。
「いらっしゃい」
「こんばんは」
板前さんとのやり取りを見た限り、岩崎さんがこのお店の常連かどうかはわからないけど、“一見(いちげん)さん”ではなさそうだ。ここしばらくは回転寿司にしか行けていない私には驚きだけど。
「何でも食べたい物を頼むといいよ」
カウンターの前に並んで座ると、岩崎さんはそう言ってくれた。
大トロ頼んじゃえば?
『バカ言わないで』
遠慮しなくていいんじゃない? 相手は高給取りなんだから。
『うるさいなあ。黙ってて!』
はーい。
でも、岩崎さんが高給取りなのは確かだ。仕事柄大体の事はわかるけど、開発部のSEは社内でトップクラスの待遇で、私のような一般事務とは比べものにならない。キャリアも違うし、岩崎さんのお給料は少なく見積もっても私の2倍はあると思う。