私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「裕美にはもっと緊張感を持ってもらいたいから言うけど、アキラが昨日現れた」

「ああ、さっきもそう言ってたわね?」

「うん。そしてまたしても俺は脅された。“また浮気が始まりましたね”と」

「でもそれって、あなたのせいでしょ? 玉田さんの前で馴れ馴れしく話したから……」

「そうなんだ。あれは大失敗だったよ。すまない」

「で?」

「アキラは言ったんだ。また帰り際に」

「何て?」

「“今度の女は、前より酷い目に合うかもしれませんよ”と」

「…………!」


私はあまりな恐ろしさに声も出なかった。もちろん“わたし”も同じく。


「どうだい? それを聞いても“素敵”なんて言ってられるかい?」


私は首を何度も横に振った。薫さんの顔を思い出したら、素敵どころか怖くなってしまった。でも……


「なんだ、簡単な事じゃない?」


私はある事に気が付き、いっぺんで気持ちが楽になった。

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