私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
それから一週間ほどが過ぎた。岩崎さんからはしょっちゅうメールが来て、毎日のように一緒に帰っている。

彼は「アキラか、あるいは玉の別の人格が現れるかもしれないから心配で……」とか言ってるけど、それはただの口実じゃないかって気がする。だって、そんな気配は全然ないから。


『それは違うんじゃない?』

なんでよ?

『だって、剛史さんは私達をアパートまで送ってくれて、大人しく帰ってしまうでしょ? もし下心があるなら、それだけじゃ済まないはずだわ』

キスはするけどね。“裕美ちゃん”に。

『な、何言ってんのよ。どうせ一緒でしょ? 私達、感覚を共有してるんだから……』

気持ちの問題よ。彼、はっきりそう言ったもん。「君じゃなく、裕美ちゃんにキスしたんだ」って……

『それは最初だけでしょ? まだ根に持ってるの? あ、わかった。あなた、ヤキモチ妬いてるのね?』

ち、違うわよ!


それはそうとあんた、さっき『大人しく帰ってしまう』って言ったわよね? それって、本当は帰ってほしくないって事?

『そんな事、“わたし”言ってない……』

ううん、確かに言った。いいの? そんな事考えて……。まだ処女のくせに。

どうしたの? 何か言いなさいよ。


『“わたし”……あの人になら処女を捧げてもいい、かも』


うわっ、大胆な発言ねって……ちょっと待ってよ!

私の体でもあるんだから、一人で勝手に決めないで!


『知らな~い』

知らないって、あんたね……

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