私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「そうなの? じゃあ、どこかでご飯食べない? 久しぶりに」

「そうだね。行こうっか?」


『ダメだよ……。どこにも寄り道するなって、剛史さんに言われてるでしょ?』

そんなの無視よ。子どもじゃあるまいし……

『“わたし”はイヤよ。剛史さんは“私達”を心配して言ってくれてるのに、彼を裏切るような真似はしたくない』

ん……わかった。

『あら? やけに素直ね? あなたらしくもなく……』


「何食べる? 焼肉なんかどうかな?」

「真由美、ごめん! やっぱり私、帰る」

「どうして?」

「家でやる事があるの。実は洗濯物とかいっぱい溜まっちゃって……」


というのは本当の話。そう言えば、今までそういう事はなかったのに、このところ“わたし”は家事をサボり気味だ。

『だって、遅く帰った後とかは面倒くさくて……』


「それって、今日やらないといけないの?」

「うん、真由美には悪いんだけど……」

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