私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
剛史さん、出て? 早く、お願い!
『もしもし?』
とても長く感じたけど、実際は数回のコールで剛史さんは携帯に出てくれたと思う。彼の低めの声が、こんなに素敵だなんて知らなかった。
「剛史さん……!」
『“裕美ちゃん”だね?』
私は“わたし”ではないのだけど、そんな事、今はどうでもいい。
「剛史さん、助けて……」
『えっ? どうした? 何があった!?』
「来たの」
『誰が?』
「それがわからないの。顔は玉田さんそっくりだけど、玉田さんじゃないと思う」
『ああ、くそっ。今はどんな状況?』
「ドアに鍵を掛けて、チェーンも掛けたわ。窓は雨戸も……」
『よし。で、ヤツは?』
「わからない。ドアを叩いて怒鳴るのはやめたけど、諦めたかどうかは……」
『わかった。すぐそっちへ行くよ』
「うん」
『俺が行くまで絶対にドアを開けるな。誰が来ても、絶対に。いいね?』
「うん、わかった。早く来て?」
剛史さんが来てくれると思ったら、スーッと気持ちが落ち着いていくのを私は感じていた。
『もしもし?』
とても長く感じたけど、実際は数回のコールで剛史さんは携帯に出てくれたと思う。彼の低めの声が、こんなに素敵だなんて知らなかった。
「剛史さん……!」
『“裕美ちゃん”だね?』
私は“わたし”ではないのだけど、そんな事、今はどうでもいい。
「剛史さん、助けて……」
『えっ? どうした? 何があった!?』
「来たの」
『誰が?』
「それがわからないの。顔は玉田さんそっくりだけど、玉田さんじゃないと思う」
『ああ、くそっ。今はどんな状況?』
「ドアに鍵を掛けて、チェーンも掛けたわ。窓は雨戸も……」
『よし。で、ヤツは?』
「わからない。ドアを叩いて怒鳴るのはやめたけど、諦めたかどうかは……」
『わかった。すぐそっちへ行くよ』
「うん」
『俺が行くまで絶対にドアを開けるな。誰が来ても、絶対に。いいね?』
「うん、わかった。早く来て?」
剛史さんが来てくれると思ったら、スーッと気持ちが落ち着いていくのを私は感じていた。