私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
それから間もなくして玄関のチャイムが鳴り、私はビクッと体を震わせた。剛史さんが来たにしては早過ぎる。

まさか、またあの薫さん、ううん、玉田さんと同じ顔をした男が来たのでは……


私が玄関へ行くのを躊躇していたら、テーブルに置いていた私の携帯がいきなりガタガタっと振るえだした。いつもマナーモードにしているのだ。

ドキッとしながらも携帯を手に取り、そのディスプレイを見ると、剛史さんからの着信が表示されていた。


「もしもし」

『俺、剛史。いま部屋の前にいるから、ドアを開けてくれるか?』

「あ、はい。ごめんなさい」


やっぱり剛史さんだったのか。でも、早過ぎない?

私は玄関へ駆けて行き、覗き窓から表を覗いた。するとそこには、確かに剛史さんがこっちを向いて立っていた。

急いでチェーンを外し、鍵を解錠してドアを開くと、いつもと違って神妙な顔付きの剛史さんがいて、でも私を見るとニコッと微笑んだ。

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