私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
私は押入れから座布団を出し、剛史に座ってもらってキッチンで冷たいお茶を用意した。それを持って部屋に戻ると、剛史は長い脚を折り曲げるようにして胡座をかき、ローテーブルに肘を付いて部屋の中を見渡していた。


「狭いでしょ?」

「いいや、そんな事ないよ。俺の部屋もこのぐらいだし。そっちの部屋は?」


剛史は襖を顎で指した。


「そっちは洋間なんだけど、その……」

「ああ、寝室だね?」

「そうなの」


洋間は寝室にしていて、ベッドが大きく場所を取っている。さっき掃除したばかりだからゴミが散らかったりはないけど、やっぱり剛史に見せるのは抵抗がある。


「こんな物しかないけど……」

「おお、サンキュー」


グラスに注いだアイスティを剛史の前に置くと、彼はそれをゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んだ。


「はあー、うまい」

「ずいぶん早く来てくれたのね?」

「だろ? 実は会社専属のバイク便の兄ちゃんに乗せてもらったんだ」

「バイクで来たの?」

「そうだよ。それが一番速いからね」

「そうなんだ……」


そこまでして私のために駆け付けてくれたと思うと、申し訳ない気持ちもあるけど、嬉しくて胸が熱くなる思いだった。

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