私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「そんな理不尽な話があんのかよ? ミスったのはそっちだろ?」

「いいえ。“こっち”ではありません」

「じゃあ、どこ?」

「ITセクションです」

「ああ、あそこかあ。ふざけやがって……」

「では、申し訳ありませんが……」


と言って私は岩崎さんにお辞儀をし、クルッと背中を向けたのだけど……


「ちょっと待てよ。俺、ITセクションに抗議する」

「そ、そうですか。どうぞご自由に……」


私は振り向いてそう言い、再び彼に背中を向けかけたのだけど……


「あんたも一緒に行こう?」

「はい?」

「あんたがいた方が話が早い」

「そう言われましても……」

「頼むよ。それくらいいいだろ? な、この通り」


そう言って岩崎さんは私に頭を下げた。岩崎さんのサラサラな髪が前に垂れ、柔らかい髪質なんだなあ、と私は思った。

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