私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「ち、違うわよ。そんなわけないでしょ?」

「そうかねえ、怪しいもんだ。玉田の顔はおまえの好みだもんな?」

「私が顔だけで判断すると思ってるの? そんなの心外だわ」

「怒るところがなおさら怪しいな」

「もう……私が好きなのはあなただけなんだから、信じてよ……」

「じゃあ、証明してくれよ」

「どうやって?」

「キスしてくれ」

「今? ここで?」

「そう。それで信じてやる」

「もう……」


私は念のため誰もいないのを確認すると、背伸びして剛史さんにチュッとキスをした。


「これでいい?」

「ダメー。舌を入れてやり直し」

「もう、しょうがないなあ」


とか言いながら、私は時も場所もわきまえず、剛史さんとの濃厚なキスに没頭してしまった。


「あん……」

「裕美、こんな事をしてる場合じゃないぞ? 事態は深刻だ」

「はあ?」


何だろう、この人。もしかして、剛史さんも二重人格だったりして?

< 83 / 137 >

この作品をシェア

pagetop