飲まないからこそ見える世界


コップを口に運ぼうとしたとき


パシッと手をつかまれ、口に日本酒が入ることはなかった



私をつかんだ手を見ると男のひとで


「係長、課長が一緒に飲もうと、あちらの席で呼んでますよ。
…出世のチャンスかもしれません。」


いつものように無表情な朝生さんだった




「おお、朝生くん。本当かい!ちょっといってくるよ。」


係長はそう言ってさっさと席を立って課長の席に


なんて単純なんだ…





「木岐さん、バカなの?酔っ払いくらい適当にあしらえなくてどうするの。」


「だって、どうしたらいいかわからなくなったんだもん。
それに一口くらい大丈夫かなって。」


「日本酒はアルコール度数高いんです。
飲んだことない未成年がいきなり飲むものじゃない…なんて木岐さんは悪くないか。
全く、あの係長がバカなんだな。」



係長をバカ呼ばわりする朝生さんはちょっと怒ってるように見える




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