与太【完】
二人を見てればもう、さっき喉元まで出かかっていたのが嘘かのように、“別れて”なんて言う勇気は消えてしまっていた。
――何これ、すごく居づらい。
手のひらのキャラメルを潰さない程度に拳を握って、
「ほんとに平気だったよ。待つの、春野も付き合ってくれたから」
二人に背を向けようとした瞬間、唐突に声をかけられる。
直の表情もさくらの表情のどちらも、背を向けているためにもちろん見えないけれど、二人とも同じような、ふわふわした笑顔で私を見ている気がした。
想い合ってる二人は、笑い方が似るのだろうか。
「そうなの? なっちゃんありがとう! ごめんね、2時間もかかっちゃって……!」
首だけで振り返れば、くりくりな大きな瞳をキラキラと輝かせ、形の良い眉はハの字に曲げ赤いぷっくりした唇で緩やかにカーブを描く彼女と目が合う。
別に私はさくらを待っていたわけじゃない。
あなたがそんなに申し訳なさそうにすることじゃない。
私は直といたかっただけ。
お礼を言われる筋合いは、ないよ。