羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「……だよな。

でも、やっぱり、どうしても聞けなかったんだよ」


 弱音を吐く酒童に、「はっ」と、天野田はさらに毒舌になった。


「君ってさあ、ガッツリ肉食系男子に見えるけど、押しが弱すぎるんだよねえ。
統率力とかに申し分はないけど、君は部下に気を遣いすぎだ。
そんなんだから、24歳になっても童貞を卒業できないんだよ。
このチェリーくんが」

「チェリーとか童貞とかうるせえよ。
そういうのは関係なくね?」


 天野田が酒童を罵る際には、必ず何処かに「童貞」関連の言葉が入ってくる。

しかしそれはさておいて、酒童はベッドの上で頬杖を突いた。


「本人に聞くのが適切、か」


 根掘り葉掘りと聞くのもなんだか気が引けるが、やはり、朱尾の変貌ぶりに酒童は納得ができなかった。



 すると。





「だから、必要ねえっていってんだろうが」




 治療室に面した廊下から、朱尾の声が低く地を這うように、酒童の耳に届いた。





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