羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
以前、天野田が、
「国家機密の方法でやるのさ」
と言っていたような気がする。
彼の話によれば、呪法という技術にも、コンピュータ技術でいう「ハッカー」「クラッカー」と同じく、技術を応用し、良からぬことを働くものがいるという。
しかも結界は人の命を守っているのだから、これを下手にいじくる技術者が現れれば、それこそ大事だ。
だから、呪法班の班員たちは、この技術を国家のため国民のために使うと誓った上で呪法班として働く。
そしてその誓いに背いた場合、その班員には厳罰が下されるのだろうだ。
(……結界の中なら、安全だな)
今まで、西洋妖怪によって結界が破られた事例はない。
結界の整備が行き届いていなかったり、建物を囲う結界用ボルトの一部が外れていたり、そういった要因による事故はあったと聞くが、酒童はあまり、そういったことは頭に浮かべたくはなかった。
(大丈夫、結界があるうちは、誰も死なねぇ)
そして、羅刹がいるうちは。
酒童は雑念を振り払うと、気分を切り替えた。