羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



1


 ずしり、と重量感のある音がして。

酒童は身構えた。

 下には、神輿のような巨体で、堂々と踏ん反り返って歩く西洋妖怪、ボナコン4体の姿があった。


「朱尾、お前は最後尾にいる奴を撃て。あとは俺たちで片付ける」

「逃げた場合は、追ってもいいんすよね」

「ああ、いいとも」

「了解っす」


 朱尾がうなづくのを確認し、酒童は最後の電話をかけた。


「桃山、聞こえるか?」

《はい》


 向かいのビルにいる桃山が、右手を耳元に持って行く仕草が見えた。


「最後尾は朱尾に任せた。
お前らは2人で前から2頭をやれ。
残りは俺がやる。
なにかあったら大声で知らせろ」

《はい》

 
 電話を切り、酒童は真下まで到達した化け物どもに向かって、刀を引き抜くや、ビルから舞うように跳んだ。


「かかれッ!」

「応‼」


 酒童の合図と共に、桃山と榊も、ボナコンめがけて飛び下りた。

垂直のビルの壁に足をつけ、酒童は一気に駆け降りる。

 ビルの2階あたりまで来ると、酒童は刀を構えるや、強く壁を蹴り、宙に舞った。

そしてボナコンの土気色の背中に乗る寸前に、横殴りに刀を滑らせた。


 斬、と血飛沫が散る。



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