羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



 しばらく灼熱の息を吐き続けていたボナコンは、やがて息をしなくなった。

 酒童は起き上がって周囲を一目する。

目でわかる限り、これで討伐は完了した。

 酒童がボナコンの毛皮に触れてみると、凄まじい熱が指先に走った。


「あっつ……」


 灼熱の吐息を吹くボナコンだけに、どうやら体とも熱いようだ。

 酒童は次に、ボナコンの血を浴びた村雨丸の刃に触れる。

こちらは熱くない。

面妖なことに、どうやらボナコンの血は高温ではないらしい。


「す、酒童さん……」


 ばつがわるそうに、桃山が呻きながらやってきた。


「おい、背中は大丈夫なのか?」

「はい、ちょっと驚いただけで……」

「見せろ」


 酒童は言うや、桃山の帯を解いて、背中の衣を捲り上げる。

露わになった白い肌は、胴体部分がじんわりと赤くなっていた。

おそらく、痣だろう。


「大丈夫には見えないんだが」

「でも……」

「応援の要請がきた時は、ビルの上かどっかで休んでろ。
痛めた身体で戦うのは禁物だ。
ドラマでもよく言われてるだろ」

「はあ……ドラマですか……」


 和ませるための冗談なのか、真剣に言っているのか、桃山はよくわからないようで、困惑した表情になる。




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