羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



「今の今まで忘れてたというか、ほんとに今思い出したというか……」



 いまいちど米搗きバッタのように平謝りするが、むくれていた陽頼は、柔らかく笑いかけた。


「うーそ。
怒ってないよ、思い出したんだし。
で。昼前がいい?それとももう少しでいく?」


 酒童はへこへこと情けなく下げていた頭をあげると、かたじけない、とばかりに、上目遣いで返した。


「陽頼の好きな方で……」

「じゃあ、11時から行ける?」

「ああ……」


 酒童は脱力して力なく答える。

デートの約束は、必ず、心に留めておくに越したことはない。


(次からはメモでもしておくか)


 やはり戦闘を仕事にしていると、そちらが優先されて、あまり命にかかわらないことは二の次になってしまう。









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