羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


 確かに、そうだ。

 酒童は挙動不審になりながらも、容姿に似合わず、恥らう女のようにカーテンを開ける。

開け放たれたカーテンの先には、ぽかん、と呆気に取られて口を丸にする陽頼がいた。


「や、やっぱり似合わないか?」


 恐々と問いかけてみる。

 陽頼はしばらく瞬きを繰り返し、そしてなにを思ったのか、酒童を試着室に押し戻し、さっとカーテンを閉めてしまった。


「はっ……⁉」


 突然の出来事に、酒童は試着室に閉じ込められたまま唖然としていた。

 さあっ、と血の気が引いてゆく。


(やっぱり似合わなかったんだ!)


 緊張のあまりに指名手配犯みてぇな顔でもしちまったのかも。

うわぁ、陽頼がドン引きするぐらいだったんだから、よっぽどヤバイ顔だったんだ、絶対に。


 心の中で凄まじく嘆きながら、酒童は頭を抱える。


「あの、陽頼……?」


 いつもの簡素な服装に着替え直し、酒童はカーテン越しに陽頼の様子をうかがう。

すると、カーテンの向こう側から、陽頼が小声で呟いた。


「もう……びっくりしちゃった」


 びっくり?

 びっくりするほど、怖い顔だったのだろうか。




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