羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
口か顔を押さえているらしく、手で口を塞いだような声だ。
カーテンを開けて出てきた酒童の前には、つぶらな眼を光らせて、なにやら意気込んだ表情の陽頼がいた。
「……怖がらせた?」
控えめに訊く酒童に対し、陽頼は答えない。
するといきなり、陽頼はがっちりとその手を握り、
「それ、買おう」と、力強く言った。
「え、買うのか?」
「買った方がいい、っていうか、買って!私おごるから!」
断固として譲らない態勢の陽頼に、酒童は困った顔で首を捻る。
怖かったのではなかったのか?
疑問符が浮かんでやまないが、とにかく、陽頼におごらせる訳にはいかない。
「いや、自分で買う」
そういいながら、酒童はカゴをもってレジに走ろうとする陽頼を引き止める。
『安く、可愛く、カッコ良く。
それが《シメムラ》』
そう言われるだけあって、上下合わせたメンズの服は安価だった。