羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
茨、もういい。もうやめろ。
酒童は心で訴えかけるが、茨は無論、聞いてはいないし気づきもしない。
「えーっ⁉茨の上司?ってことは、羅刹?
モデルの間違いじゃね?」
「まだ若いねー。いくつくらいなの?」
「24じゃないかな」
少女たちは1人でに盛り上がっている。
呆然と立ち竦んでいる酒童を置き去りにして。
「あなたも羅刹なの?」
そこで、一時は気圧されていた陽頼が、控えめに口を開いた。
「そうなんですよー。
いまは違うけど、前までは酒童さんの班でお世話になってました」
頭の後ろに手をやり、茨が呑気に答える。
なんだか酒童は、嫌な予感がした。
「お姉さんのことも、かねがね聞いてます。
なんでも酒童さんの、お……」
「それデマ!
それは間違ってるから、たぶん!」
酒童がたまらず割って入り、茨の口を押さえる。