羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


 茨、もういい。もうやめろ。


 酒童は心で訴えかけるが、茨は無論、聞いてはいないし気づきもしない。


「えーっ⁉茨の上司?ってことは、羅刹?
モデルの間違いじゃね?」

「まだ若いねー。いくつくらいなの?」

「24じゃないかな」


 少女たちは1人でに盛り上がっている。

呆然と立ち竦んでいる酒童を置き去りにして。


「あなたも羅刹なの?」


 そこで、一時は気圧されていた陽頼が、控えめに口を開いた。


「そうなんですよー。
いまは違うけど、前までは酒童さんの班でお世話になってました」


 頭の後ろに手をやり、茨が呑気に答える。

 なんだか酒童は、嫌な予感がした。


「お姉さんのことも、かねがね聞いてます。
なんでも酒童さんの、お……」

「それデマ!
それは間違ってるから、たぶん!」


 酒童がたまらず割って入り、茨の口を押さえる。




< 144 / 405 >

この作品をシェア

pagetop