羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
「お姉さんじゃないよー。
付き合ってるの」
陽頼は陽頼で、茨が自分を、酒童の「お姉さん」と思ったのだと勘違いして、あっけらかんとしている。
「えーっ、カレカノなんすか?」
「付き合ってどれくらい?」
「お姉さん、いい人捕まえたじゃん」
恋をしたい盛りの女子高生たちは、餌を撒かれた鳩のように盛り上がった。
なぜ女性は、他人の色恋ばなしに、こうも夢中になれるのだろう。
酒童は固まったまま、そんな疑問を抱く。
「んー、6年くらい?」
陽頼はすっかり、女子高生たちに打ち解けている。
「6年⁉長ーい!」
「あたしなんか付き合って3ヶ月で別れたよ⁉」
ほぼ真ん中にいる酒童などお構いなしに、陽頼と女子高生たちは、おのずとガールズトークを始めている。
なんだか酒童のほうが肩身が狭くなってきて、酒童はそそくさと自分の席に引っ込んだ。
「え?みんないくつなの?」
陽頼が聞くと、茨も含めて全員が人差し指をピンと立てる。
「高1でーっす」
「わっ、高1⁉なんか大人っぽーい」
「でしょーっ!
いまも完全メイクしてんですよ」
「高校生活たのしい?
やっぱり購買のパンでお弁当とかする?」
「あたしら米食べてるー」
「いいなあーっ。
私の頃、屋上は不良の溜まり場だったから」
「げ、まじっすか」