羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


3


 こんな田舎町にはとことん不似合いな、縦にも横にも大きな建物が、この都市の中枢にはある。

 ここからもっと離れた場所に、日本最大級のショッピングモールがあったそうだが、そこはもう荒廃してしまって、いまではたまに羅刹の隠れ家として利用される程度である。

600年も前から存在しているそうだし、数百年も営業できたのだから凄いことだ。

 だが今では、こちらにあるショッピングモールが最大級である。

人混みの多いし、アクセサリー専門店だとか、服屋だとか、若者が好きそうなものが大半の商品を占めているので、当然ながら客には若者が多い。

 アクセサリー専門店、といっても、その種は多彩なもので、パンクやロック調のゴツゴツとしたものもあれば、女性向けの煌びやかなブレスレットやネックレスを販売している店もある。

 そんな店のひとつに、陽頼は立ち寄っていた。


「んー」


 陽頼はブレスレットが飾られた手首の模型の列を、しかめっ面で眺めている。


「それ、男用じゃね?」


 横から酒童が問うと、陽頼は眉にシワを寄せたままうなづいた。


「知り合いの男の人がね、もうすぐ誕生日なの。
それでプレゼントを買おうかなと思ってたの」

「ああ、それでここに」


 酒童は納得した。


「いいじゃん、それ。
サプライズでやるのか?」

「うん。
だから男性の嶺子くんに、どういうのがいいか聞いてみようかと思ったの」


 そんなこと言われても。

 酒童は思案した。

 自分はあまりファッションとかいうものには微塵の興味も示さないので、その男性になにをあげたらよいのか、陽頼にアドバイスはできそうにない。

かといって、陽頼は男のファッションがわからないと言っているし、わからないで通すわけにもいかないだろう。


「そだなー……」


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