羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


 じっくりと見てみるが、やはり酒童には、どういうものが男性に喜ばれるのか想像がつかない。


「そだなー……」


 いまいちど繰り返す。


「……これ、サプライズで渡すんだよな?」


 酒童が、漆黒の手の模型を指差す。


「そうだけど」

「なら、なんでもいいんじゃねえかな。
そりゃあ、あんまり変なもの贈られたら困るかもしれねえけど、贈った側が懸命に選んでくれたもんなら、なんでもいいと思う」

「好き嫌いとか、あっても?」

「まあ、あんまりいい助言は出来ねえけど、もし贈られるのが自分だと仮定したら、貰えたものならなんでも嬉しい」


 あくまで、俺の意見だけど。


 酒童は自信なさげに言ったが、陽頼はそれでも、お菓子をもらった子供のように、唇を小さく吊り上げた。


「そうなんだ。

……じゃあ、ちょっと外見て待ってて。
私、選んで来るから」

「俺は見ちゃダメか?」

「その人がプレゼントもらってビックリした顔、撮って嶺子くんにも見せてあげたいの」


 悪戯っぽく微笑むので、酒童はプレゼントを受け取る彼の顔を頭に浮かべながら、向かいにある服屋に視線をやった。








< 148 / 405 >

この作品をシェア

pagetop