羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》


 昼のことといい、いまのことといい、今日はいったいどうなっているのだ。

 酒童は悪態をつきたくなる。


「全員、気を抜くな!相手は早いぞ!」


 酒童は鯉口を切ると、村雨丸を月光下に抜きはなった。

しゃりん、と、玉鋼の刃と鞘がこすれ合い、羅刹たちから尋常ならぬ剣気が放たれると、


―――うおおおおん……。


 と。

 犬とも違う、狼の遠吠えが宵の空をつんざいた。


「上だ!」


 酒童が叫んだ。

 それは、人狼が牙を剥き、ビルの屋上から降下してきたのとほぼ同時だった。



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